サントリーの栄養食品「セサミン」のCMが前から気になっています。出演している加山雄三さんが、ひとことも「セサミン」を薦めていないからです。
にもかかわらず、CMとしては、加山さんが「セサミン」を強く薦めているかのように印象づける編集がなされています。これは視聴者にミスリードさせるための恣意的な編集です。一流企業のCMがこういう「胡散臭い」手法を使うのはどうかと思っています。
セサミンCM
セサミンのCMは、コンサートの舞台や楽屋で加山さんがしゃべるカットに、商品画像とナレーションをつないで作られています。加山さんのセリフは画面下に字幕が出ます。
画像で引用しましたので、まずはご覧ください。
セリフとナレーション書き起こし
加山さんのセリフとナレーションの文言を、なるべく正確に聞き取って書き起こしてみます。
まずは加山さんのセリフ。
みんな元気だね!
もしかしてセサミン飲んでますか?
どう見ても80歳に見えないでしょう
なんでオレこんな元気なのかつったら…
続いてナレーション。
サントリー「セサミン EX」
若々しい加山さんの味方です
再び加山さんのセリフ。
頑張れるってことはね
感謝しかない
オレはだってそういう実践してるからさ
トライしてみてくださいよ
最後に締めのナレーション。
「セサミン EX」
おおよそ1ヶ月分を1000円でお試しいただけます
(以下略)
ワザと誤解させる編集
いかがでしょうか。
赤字の加山さんのセリフ、最初こそ商品名を出しているものの、それは「ジョーク」として観客に言っているだけです(実際にCMを見ると、そういう言い方で言っています)。
それに続くセリフは「どう見ても80歳に見えないでしょう」「なんでオレこんな元気なのかつったら…」という自問自答ですが、加山さんが答えを言う前にカットされ、「セサミン EX」「若々しい加山さんの味方です」というナレーションが繋がれています。
これ、カットされたセリフで加山さんは「毎日走っているから」と言っているかもしれませんよね?
もし仮に、加山さんがカットされた部分で「セサミン飲んでるからなんですよ」と言っていたとしても、こういう編集はCMでやってはならないと私は思います。なぜなら、それはトリックやプロパガンダの手法だからです。
続いて加山さんはこう言います。
「頑張れるってことはね」「感謝しかない」「オレはだってそういう実践してるからさ」「トライしてみてくださいよ」
加山さんが「セサミン EX」に感謝している、「セサミン EX」を実践している、「セサミン EX」にトライしてみてくださいと薦めている…ぼんやりしているとそう聞こえますが、実際は、加山さん自身の口からは「セサミン EX」という単語は一度も出ていません。
言っていないのに言っているように聞こえてしまうのは、このCMがそういう視聴者の誤解を狙って編集されているからです。
カットされたセリフで加山さんは、親に感謝しているのかもしれないし、仏の教えを実践しているのかもしれないし、死ぬまで恋愛にトライすることを薦めているのかもしれません。
それは冗談ですが、とにかく、CMでは禁じ手のはずの編集技法を使っていることに気づいてしまうと、CMの何もかもが信用できなくなってしまいます。
別バージョンでは薦めている
実は、ここで取り上げたとのは別バージョンのCMでは、加山さんは自らの口でハッキリと「セサミン」を薦めています。ですからなおさら、どうしてこのバージョンではこんな編集をしているのか理解に苦しみます。
加山さんのシーンの画面左上に「個人の感想であり効用ではありません」という但書がずっと出ているように、薬と違って「効く」と言えない健康食品のCMには、いろいろ難しい制約があるようです。視聴者には伺いしれぬ事情があったのかもしれません。
しかし、だからといって「トリック」を使っていいわけがありません。表現手法は他にいくらでもあるはずです。
一流企業であるサントリーのCMがなぜ、こんな「胡散臭い」手法を使っているのか、このCMを目にするたびに気になっています。
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